引越し

あの日――引っ越しに現れたのは、まさかの戦力外でした。

私は引っ越しの見積もりと業者選びには、人一倍気を遣います。
というのも、引っ越しに関する苦い思い出があるからです。
大学進学を機に一人暮らしをすることになった私は、地元にある引っ越し業者の見積もりを取って、引っ越しをしました。

見積もりでは、「単身の簡単な引っ越しなので、お伺いするのは一人で大丈夫でしょう」ということでした。
そして、引っ越し当日。
洋服を段ボール箱につめていた私の前に現れたのは、すごく高齢の男性でした。
こんなこと言っては失礼かもしれませんが、「本当に大丈夫なの?」というレベルの力が無さそうなおじいさんです。
残念なことに、その読みは当たりました。
洋服ダンスや本棚など簡単な家具があったのですが、全く運べないのです。
頑張ってはいるけど、お一人では運べない状態です。
予定の時間が迫っていたこともあり、焦った私の父は手を貸さずにはいられませんでした。
結局、ほとんどの荷物を父と私が手伝ってトラックに運び入れました。
そして、腰痛と疲労感が残ったまま、引っ越し先のアパートへ移動することになったのです。
今思えば、引っ越し業者にクレームの電話を入れれば良かったのかもしれません。
あの悪夢のような引っ越しから25年が経ちました。

現在、その引っ越し業者は存在しません。